嵐の中を探し回り、助けに向かう

会社に戻って「不思議な力」の人の自転車が自転車置き場に残っているが目に入る。まだ会社で待機しているのかなと思って、探してみたがいなかった。もしかしたらと思ってネットで調べてみたところ、「不思議な力」の人が乗り換える私鉄が止まってしまっている。お父さんの指示に反する事を助言してしまったのでしまった事に!!
自分が予想していたより太平洋上の高気圧が強かったので、予想進路よりも北寄りに台風が進行してしまったので台風の進行方向右側をかすめて、予想以上に影響を受けてしまったようだ。
「不思議な力」の人は、歩いてJR駅に向かわれたと思うし、もしかしたら私鉄乗換駅より戻ってきているかもしれないと思い、すぐにJR駅へ向かう。車を路上駐車して駅構内を探す。ちょうど到着した電車から橋梁の風速制限で止まってしまったようで人が沢山いるが姿は見当たらない。
私鉄乗り換え駅に居るかもしれないので、今度は4駅向こうの乗り換え駅に向かう。以前、東海豪雨のときにこの駅で一夜を過ごされた経験があるので、もしかしたらと思う。かなり風雨がひどくなり路上も飛来物が多々あるので、あまり飛ばす事も出来ないので40km/h程度でゆっくりと走る。走っていても振り子電車のように強制的に傾いているような感覚が分かる。
乗換駅に到着したら路上駐停車禁止の所へ車を止めて、駅構内に向かう。駐停車禁止よりも「不思議な力」の人の方が大切だから当然である。駅コンコースから改札内・止まっている電車の中も探し回ったが彼女の姿は見当たらなかった。
彼女に直接連絡が取ればいいのだが、職務上知り得た情報を私的に使う訳にはいけないので連絡が取れない。電車が止まった時間的にも自宅へは帰られないとは思うが、ご自宅と連絡を取っているかも知れないと思い、勇気を出して電話をかけてみると、お母さんが出られた。「無事に家に帰られましたか?」とうかがうと乗換駅から私鉄で4駅行かれたところで足止めされてしまったとの事。「自分がお父様の指示に反する事を言ってしまったので申し訳ありませんでした。」と謝る。4駅向こうは土地が低いので、伊勢湾台風の時には長期間水につかり多くの犠牲者が出たところなので、自分も近づくのが危険なので迎えに行く事は断念。「21時ぐらいになって風雨が収まったら迎えに行かれる」と言われたので「申し訳ないけど娘さんに逢われましたら、ごめんなさいとお伝えください」とお願いし電話を切る。
しかし「不思議な力」の人が一人心細く不安になっているかもしれないし、自分はどうなってもいいし、彼女と道連れの運命共同体になってもいいから、彼女を助けに行かねばとの衝動に駆られて、「不思議な力」の人が足止めされている駅へと向かう。
このまま向かっても「不思議な力」の人の家まで送り届けるガソリンはあるが、帰りの燃料はない戦艦・大和状態なので、あと一駅手前に開いているガソリンスタンドを発見したので給油をする。給油後、トイレを借りて小便をしているときにPHSに電話がかかってきたので用を足しながら電話に出ると「不思議な力」の人であった。家との連絡したときに自分が乗換駅まで迎えに行った事を聞いて電話をしてくれた。そして「乗換駅まで来てくれてたみたいでありがとう。今、地下鉄と近鉄の駅に居て、お友達の所に泊まります」とのこと。「えっ、地下鉄と近鉄の駅!?」と思わず聞き直した。足止めされた駅からは遠いし、家と方角も違うからである。「どうやって移動したの?」と聞いたら「市バスと地下鉄で移動した」との事。「気をつけて帰ってくださいね」と言われたで「もし何かあったら連絡してよ」と伝えて、電話を切った。
結局、深追いしただけで「不思議な力」の人にはお役に立つ事が出来なかったし、くたびれ損であったが、もし送り届けて、お父さんお母さんにお会いする機会があれば、深く頭を下げて謝ろう。ついでに馬の骨よりも好感度アップして、両親から落としてしまおう。また「不思議な力」の人には自分が本気だと言う事が分かって欲しかったのだが、その機会も消えてしまった。